第81回益田教育サークル

2月24日(木)
 本日の参加者4名。筑波附属小学校研修会の報告2名、島大の講座の報告2名。
 サークルで研究会などの報告をするということは、報告を受ける人にもメリットがあるが、それ以上に報告をする人にもメリットがあるように思う。その理由として、研修会で、自分が学んだつもりになっていることを人に伝えるために、もう一度整理をして自分の中でまとめなおす作業をするからである。その作業を通して、なんとなく分かったつもりになっていた部分をはっきりさせ、本当に分かったという状態にすることができるのだ。そういう意味で、研修会の報告ができるサークルを持っていることをありがたく思う。
 さて、今回の私の報告は以下のとおり。あくまでも、私個人の感覚からの報告なので文責は全て私である。

筑波大学附属小学校 学習公開・初等教育研修会 報告

@田中博史 学級  2年生算数 「いろいろな形(広さ比べ)」

 受付をして、すぐに田中学級へ行った。まだ、授業までは1時間以上ある時刻だった。それでも、さすがに有名な先生の授業だけあって、参観者の数は半端ではない。すでに私の前に2列ぐらい参観者の壁ができていた。

 子どもたちは自由に遊んでいる時間だった。その遊びも「パターンブロック」という図形に慣れ親しむ要素が入った積み木のようなものだった。これをドミノ倒しのように並べて遊ぶ子、積み木のように積み上げて遊ぶ子などいろいろ。

 読書をしている子もいた。

  授業までに1時間以上あったので、授業に入る前に、歌を歌ったり、暗唱をしたり、突然1分間スピーチをしたりなどいろいろと見ることができた。

 参観者の受付が間に合わないということで、急遽10分ほど、授業時間が下がった。その時間を利用して、ジャマイカという計算ゲームをした。このゲームは優れもので、黒いさいころ1060の目があるものと、16までのものがそれぞれ1つずつ。白いさいころが16の目があるものが5つでできているものだ、黒い目の合計をそのほかの5つのさいころの目の数字を四則計算を使って作り出すというものだ。

 これを参観者にルールを説明する意味も含めて全員の前でやったのだが、この計算が速い。2年生とは思えないぐらいのスピードだった。こういうゲームを使いながら計算力をつけていくというのは田中先生の授業スタイルとも通じるものがあると思った。

 

授業について

発展的な教材として

「いろいろな形(広さ比べ)」

授業の流れ

 1.じゃんけんゲーム

   子ども対教師で模範のゲーム

    自分の陣地に三角形を敷き詰め、どちらが広くとったのか?というゲーム。

  しかけ1

    わざと、先生の陣地と子供の陣地の広さを違え、先生のほうが有利なようにしおく。

     その効果  ずるいという子に、先生がじゃあずるいのなら証明してみて、と投げかけ、ものさしで比べたり、重ねて比べたりして、図形の広さを比べるという基本的な操作を確認できる。

   グー で勝ったら1番大きな直角二等辺三角形

   チョキで勝ったら2番目に大きな直角二等辺三角形

   パーで勝ったら1番小さい直角二等辺三角形

  しかけ2

    直角二等辺三角形にする  効果・・合わせると正方形になるので単位面積

という感覚の基礎を養うことができる。

  しかけ3

    大きい三角形は小さい三角形二つ分の大きさ  効果 二つを合わせることで大きいのになることから、点数化でき、大人数のときに一番陣地をとったのはだれか比べることができる。

 2.実際に子ども対教師で模範のジャンケンをする。

  しかけ4

     それぞれ自分の陣地に三角形を並べる  効果 広さを比較するときに二つあわせて大きな三角形と一緒になるなどいろいろな思考を導き出すことができる。

     実際には、二つあわせると大きな正方形になるので、その正方形が先生は3つできるし、○○ちゃんは2こと半分できるので、先生の勝ちといった意見が出された。

 3.子ども二人組みでの対戦

   しかけ5

紙に三角形がたくさん書いてあり、勝ったらぬるというようにしていた。

効果 移動できない条件なので、どうしても計算を要求される。大きなのがいくつ、小さいのがいくつというように。

しかけ6

三角形の数にかぎりがある。  効果 勝負をしている最中大きいのがなくなったらどうしたらいいんですが?という質問があったが、そこで、どうしたらいいか、全員に聞く、すると、小さいのを二つあわせてその代わりにしたらいいというような意見が出た。このように、わざとうまくいかないような状況にし、それをみんなで解決することで、この図形についての理解を促すことになる。

4.だれが一番かを比較する

  しかけ7

    見た感じだけでは一番が決まらない。  効果 点数化しようという流れになり、ここでも子どもたちの活発な思考を促すことになる。

  しかけ8

    小さいのから1点、2点、3点という点数化をした子の意見を最初に取り上げる。 効果 三角形を見た感じ錯覚でこのような点数をつけてしまうのであるが、実は1点、2点、4点 でなくてはならず、そのことに気づかせるために子どもたちの活発な思考を促すことになる。

5.三角形を切り取り、次回は並べての勝負をすることを予告する。

  しかけ9

一番大きな三角形を配り、これをつかって、2番目、3番目の三角形を作るのはどうしたらいいかを聞く。 効果 教師が全部図形を準備するのではなく、子どもたちに作業をさせることで、図形と親しむことになる。

 

A 坪田耕三 学級の授業 6年生算数  「数え方の工夫」

 提案授業ということで、1000人以上入る講堂での授業。それでも通路や前のスペースも人でいっぱいだった。廊下には入れない人があふれているといった状況。1500人はいたかもしれない。これだけの人の前で授業をするというのはそうとうなプレッシャーだろうと思う。

 私は幸いにも左横の通路(立ち見席)で授業を参観することができた。

授業の流れ

.課題の提示

  緑のボール6個、赤のボール2個を両手でいっぺんに引き、どういう組み合わせがあるか考えさせる。

    R−R  R−G  G−G の3とおり

2. どの組み合わせが出にくいか出やすいかを検討させる。

  R―Rは本当は出ないんじゃないかと子どもたちにゆさぶりをかける。

  1番でやすいのは G-G  つぎが R−G  出にくいのがR−R

3. 本当にそうかどうか、検討させる。

   ボールに番号をつけて、順列で考える子、

   リーグ戦の表を使って調べる子

  など、さすが鍛えている坪田学級の子供たちで、どんどん意見が出た。

4. 実際にボールで試してみる。

  38人の学級であったが、R−Rは1人、R−Gが20名、G−Gが17ぐらいだった。実験と本当とは違う場合があるということと、なぜ、こんな結果になったのかを子どもたちに聞いた。 子どもたちは、もっと実験の回数を増やせば、本当の確立に近づくはずと答えていた。

 

 坪田先生の授業について、子どもたちが鍛えられ流れるような授業という印象だった。

 

田中先生が後の研究協議の場で、私だったらと代案を提示されたが、そちらのほうだと、不思議なことが起こるので、子どもたちが本気でなぜ?という気持ちになるだろうと感じた。

 

その代案とは、 緑を5個、赤を3個で、右手用、左手用それぞれ準備してとったときというものだった。

この数字だと、予想では緑―緑が多いと考える子が多いのだが、実際は緑―赤が多いという逆転現象が起こるので、なぜそうなるか?というところから子どもたちの課題になるというものだった。

 

研究協議で、お互いの考えを筑波の先生同士で切りあっていたのが印象的だった。

 普段の生活では年功序列はきっちりしているそうだが、研究の場と、職員会は年齢はまったく関係がないということだった。

 

2日目

B 二瓶 弘行 学級 「北の国への手紙―倉本聰シナリオ『北の国から』の単元化」

 受付開始時にはもうすでにたくさんの人が並んでいた。受付を済ました足ですぐに二瓶学級へ行く。事前に会場案内図を調べていたので、すぐにつく。その点が昨日とは違っていたのか、今度は一番前に並ぶことができた。(とはいってもいっぱいに近かった)時間がたつにつれ、廊下にまで人がいっぱいになり、最前列でこの授業を見ることができよかったと思う。

 さて、授業開始までの時間「語りの時間」として、一人一人が全員の前でいすに立って暗唱した物語などを語った。この語りだけでも来たかいがあるくらい、みんな上手で、堂々としていた。物語教材ではどのように朗読したらいいかという課題を追求していくことをずっとしてきた二瓶学級ならではの心のこもった語りに圧倒された。

 授業が始まった。北の国から全24話の中からある部分の会話を二瓶先生が言う。それはどの場面だったか?というようなクイズである。超イントロクイズのように、少しの会話だけで、子どもたちは手をあげて、答えていた。それだけ、このシナリオを読み込んでいるという証拠である。

  「北の国から」の重要場面を音読・語り

  これもすごかった。

  靴を探すとき、最初不信に思って注意した巡査も、結局さがしてくれたとき、涙が出たという場面があるが、そのときの涙のわけを語った。

   一人でノートを読み、そのわけをもう一度考える

         ↓

   二人組みになって、お互いの意見を交流する(5分)

         ↓

   全員の前で、自分の意見を語る。

  これが圧巻。本当にすごかった。一人一人が深い読みをしていて、どの子の意見もよく読みこまれていて、それなりに説得力があった。最後に言った子どもの意見には参観者全員がうなってしまうような深くすばらしい考えで思わずこちらが涙が出そうになった。

  これだけ、読み込んで、これだけ考え、これだけ堂々と意見が言えることは本当にすばらしいと思った。そして、このレベルなら、どの子の考えも間違いという感じはしなかった。それぞれが全力で解釈した涙のわけで、あっているあっていないを超えたものと感じた。

 

   本当に参観してよかった。戸田さんの授業を見たとき以来の感動であった。

 

My tracks 2005